【DXコラム】 RPA導入して全体工数削減できないのは
2016年頃から夢のツールとして話題になり始め、2018年以降たくさんの解説本、参考書が発行され、企業の公開セミナーも数多く開催されました。皆さんも参加されたのではないでしょうか。その当時は、特に事務分野でいままで時間に追われた膨大な量の業務処理を自動化できる、しかも24時間稼働して文句も言わず正確にこなせるロボットとして大きな期待を抱かれたと思います。
しかし、現状の処理方法をそのまま自動化できても細切れな自動化にしかならず結局人が確認するために担当者を減らずまでには行かず、年間のライセンス料の投資に見合わず導入した1年間でライセンス終了してしまう企業が少なからずあったと聞いています。
ではなぜそうなってしまったのでしょうか。もっとも大きなポイントは物の生産工場と違い、事務処理は特定の申込処理などを除き、すべてが一貫して時間的に流れる作業ではないからです。処理の始まりから終わりまで止まることなく流れる作業であればシステム化し易いのですが、途中に承認、情報(証憑)待ちなど業務の流れを分断する要素がいくつも存在しています。また、少量多品種の業務が多いこともRPAの運用に大きな障害となります。
ということは、標準化された大量の業務にしかRPAは適用できないのでしょうか。Yesと答えるのが一番簡単な回答ですがそれではいつまで経っても業務処理を人が行わなければなりません。そこでそれぞれの企業で行われている事務処理、業務処理が現状の方法でしか完了できないのかどうか考える必要があります。もっとスムーズに処理できる標準化したパッケージ化された処理方法に変更するデメット、障害事項などはどのようなことなのか、回避する方法がないのか検討します。また、最終的な処理目的が達成できるのであれば現状を大幅に変更してでも実行する決意が必要となります。現場では変更を拒み、変更するデメリットしか考えようとしなくなる傾向にあるからです。
例えば、ERPや販売管理システムなどの標準的な請求処理では①~⑤までの一貫した業務プロセスとなっているのケースでも、実際は赤枠のように、お客様都合などの営業上として、分岐処理が必要になり複雑化した処理になっていることが多いと思います。もしこの赤枠の部分が必要ないのであればERPや販売管理システムと②~④の部分を連携させRPAすることができれば大幅な省力化につなげる可能性が大きくなす。
では、どうすれば標準化した業務プロセスに変えられるのでしょうか。それには、次の三段階に分ける必要があります。
Step1:業務処理側でできること
Step2:営業担当を含めてできること
Step3:取引先を含めてできること
自社の業務プロセスを可視化した上で前述の赤枠部分はどこに当たるのか区分します。次に業務分岐を整理して行く訳ですがここで重要なのは、標準化するための目的を絶えず担当者共通の判断基準にすることです。この判断基準がぶれると部分的な変更しかできなくなります。最後は社外も含めて最も困難そうに思えますが、自社と同様に他社も同じ課題が存在し、標準化することでスムーズに解決することも少なくありません。
このようにして標準化プロセスに変えつつ、RPAを導入して行くことが成果となる全体工数の削減に繋がり、コア業務へのシフトが可能となります。現状業務をそのままRPA化し、一見自動化できたと思えても実際には工数が削減できていない、こうした結果にならないよう標準化プロセスを常に意識することが必要です。